空気感で酔わせるピッツァレストラン『808 Monsmare』@箱根湯本
『808 Monsmare』
箱根湯本駅から徒歩8分の裏路地。昭和風情の残る和の飲食店や旅館が立ち並ぶ一角に「808 Monsmare」はある。平日の閑散とした箱根だが、店内は満席。時間によっては待ちが必要なこともある。
私がここを訪れるのは2度目だが、前回訪れたのは一月前のこと。箱根と言うと温泉を思いつく人は多くても「ピッツェリア」を頭が過る人は多くないだろう。そんなことを思わせてしまう理由は、店内に入ってすぐに感じる凜とした空気感にある。ホールスタッフのキビキビとした動きは無論だが、シェフの動き手つきは生粋のピッツァイオーラのものではないのはすぐ分かる。あれは間違いなくレストランの料理人の動きだ。
ピッツアのメニューは13種類ほどでクラシカルな名前が並んでいる。シチリアーナ、クアトロ・フォルマッジを注文。
最初に出てくるアイスコーヒがすでに一般的な飲食店で出てくるリキッドタイプのものではなく、それ専用にドリップされたものなのが分かる。その心意気が嬉しい。
続いてピッツア。シチリアーナに乗っているブラックオリーブがスライスではなく、ホールのままだ。かぶり付いた時に転がり落ちることはアイスコーヒーをわざわざドリップしてくる店であればすぐに気づくはず。それを敢えてやってくる。その理由は?オリーブを見つめてすぐに理解できた。種付きのオリーブの種を抜いて使用している。オリーブ好きの自分は家でつまみにすることがあり、種ありの美味しさは種ぬきの既製品より格段に上であることは当然知っている。このお店は種を抜く一手間をかかっても香り高い方を提供しようとしているのだろう。それをさらにスライスして使うことも考えられるが、シェフはさらに意図があってホールのまま使用しているのだろう。店内は満席、ウェイトの列が出来ている。このことを尋ねるのはまた次回。
食べ終わって手をウェットテイッシュで拭いしばらくくつろぐ。洗面所で手を洗おうと考えた瞬間、ホールスタッフが新しいウェットティッシュを持って来てくれる。偶然なのか気づいたのかは分からないが、この店の空気感が生んだミラクルだった。
そう、ここはピッツェリア「808 Monsmare」ではなく、箱根ピッツァレストラン「808 Monsmare」という新しい業態なのである。
美味しくピッツァをたべる秘訣は焼きたてを1秒でも早く食べること。なるべく窯に近い席に座り、出てきたらすぐに空いたお腹を満たそう。冷めてしまってはシェフやスタッフの心意気が台無しだ。食べ終わった後に、パートナーと心ゆくまで講釈と会話を楽しもう。それがピッツァレストランでの鉄則だ。
空気感と心意気を楽しむ。それが新業態「808 Monsmare」なのだ。
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