へんてこアニキと初めて会社を作るの巻
~兄妹のスタート~
兄は昔から何だか訳がわからない激しい人だった。
全然帰ってこないなぁと思ったら、ひたすらマンホールの中を覗いていたり、壊れてもいない自宅のインターホンを突然分解し始めたり、テニスプレイヤーのアガシにはまって変な声真似しだしたり…
基本的にはもの静かでほとんどしゃべらない人だったので、私と兄は仲がいいとも悪いともない、何もない兄妹だった。
でもどこかで同じ両親の元に生まれ育った心の痛みを共有している、表裏のような存在なんだと感じていた気がする。
兄が社会人になった頃から、私たちはお互いに色々相談するようになった。
失恋した時に一晩中電話で話を聞いてくれたり、父に結婚を認めてもらえなかった時に背中を押してくれたり、私は要所要所でいつも兄に助けてもらってきた。※兄は一つも覚えていないらしいけど。
しかし、兄の心と身体は少しずつ壊れていき、突然私は兄に縁を切られた。
そして2年後再び兄に会った時、兄は廃人のようになっていた。
表情もなく、眠ること、座ること、じっと止まることもできず歩き続け、ただ自分を責める兄に涙が止まらなかった。
「ねぇ、神様、お願い。どうか兄がもう一度笑えるようにしてください。」
それから2年…兄は自分の足で立ち上がり、自分にできることを少しずつ始めて、表情が少しずつ柔らかくなった。生きたい気持ちが兄を支えていたのだろう。
そしてある日、兄からの一言
「まりさぁ、俺の仕事手伝ってくれない?」
あぁ、兄と一緒に私も自分の足で歩いていきたい。
そりゃあ、傷つくこと、むかつくこと、納得いかないこと、色々ある。
でも、やっぱり兄へ敬意と信頼と、恥ずかしながら愛おしさが私を動かす。
廃人のようになり、そこからまた歩きだした兄と
ようやく自分の意思で自分の足で歩きだそうとしている私と
どんな珍道中が待っているのやら。
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